キッチンデザイナーだった私は、いつかトータル的にインテリアコーディネートをしたいと漠然と考えていました。スキルアップを経て、2008年ティアラジャパン社を設立しました。
私はインテリアデザイン専門学校を卒業後、20歳で欧米オーダーキッチンの会社に入社しました。バブル経済真っ只中の頃でした。学生時代にインテリアと並行してNFD公認校フラワースクールでも学び、フラワーデザインの資格取得していたこともあって、実は卒業後はフラワービジネスの仕事がしたかったのですが、先生方の薦めにより、キッチン会社へ就職しました。入社後すぐにオーダーキッチンの設計をするようになり、有名人や会社・医院経営者等のお客様と豪邸のキッチンを担当し、数多くキッチンと家具のデザイン設計を手掛けました。有名輸入キッチンメーカーから難しいデザイン設計を引き受けたり、大手住宅会社のVIPのお客様には、住宅会社の設計士やインテリアコーディネーターの代わりに打合せに伺い、キッチンデザイン設計をするなど、陰ながらプロ向けへのサポートもしていました。モデルハウスのデザインやハウスメーカーのキッチン商品開発を手掛けることもありました。
オーダーメイドの輸入・設計・販売・施工をしていると、キッチンだけでなく家具、室内ドア、玄関ドアやミラー等までオーダーが広がり、だんだん家一棟分のインテリアコーディネートがしたいと思うようになりました。
キッチンブランドマネージャーに
まもなく、取引先でもあった商社とキッチンデザイナーとして個人契約しました。その商社は、外国人向け輸入住宅の大規模プロジェクトを受注していて、輸入キッチンの専門家が必要だったのです。そのプロジェクトだけの契約のつもりだったのですが、新事業として自社ブランドのキッチンを展開したいと依頼を受け、日本市場向けにアメリカのキッチン会社との業務提携のため、ブランドマネージャーとして、急遽アメリカシアトルへ一人で海外出張することになりました。シアトルには支店があり、現地では建材に詳しい通訳がつくので、英語力よりキッチンキャビネットに関する技術的な事や、マーチャンダイザーの役割を求められました。この頃、北米のキッチン工場(カスタム)は、ほぼ全て視察したので、キッチン工場の機械に詳しくなりました。幸いそれまでに私には、欧米の輸入キッチンメーカーの設計実績があり、オーダーメイドのキッチン設計やキャビネット構造に詳しかったこと、大手住宅会社も担当させてもらっていたことで、日本の住宅業界のキッチン施工問題や流通に関する情報も把握していたこともあり、日本市場にふさわしい画期的なアメリカ製キッチンの販売体制を整えることができました。
日本国内においては、全国のハウスメーカー、輸入住宅会社を廻り、設計士や営業マン向けにキッチン勉強会を開催、設計士へキッチンプランのアドバイスを行い、新築施工現場へ出向いて、輸入キッチンの施工指導を行うなど、目まぐるしく活動しました。又、社内にアシスタントや設計営業スタッフも増え、売上も一躍トップになりました。一方で、定期的に海外の展示会に出張へ行ったり、アメリカでキッチンCADソフト開発も行いました。
環境の変化
そんな中、ある出来事が起こりました。会社移転のため、一般客向けに輸入建材ショールームをオープンすることになり、法人向け体制から個人向けにシフトすることになったのです。キッチンが専門分野だった私も、キッチン以外に高級輸入窓、ドア、フローリング、階段、ブリックタイル、屋根、塗料などの輸入建材で家1棟分のインテリアコーディネートや、高級輸入住宅会社の特別なお客様も担当しました。最初の欧米オーダーキッチン会社を退職した理由「家一棟分のインテリアコーディネートをしたい」がようやく実現することになりました。2000年のことでした。
ターニングポイント
その後、高級輸入住宅プロデュース・プロジェクトマネージャーとして新規事業を立ち上げることになり、アメリカの建材メーカーや取引先の協力を得て、アメリカの富裕層向け住宅のマーケティングを行いました。富裕層専門の建築家やインテリアデザイナーの存在を知り、家とインテリアに対する考え方のレベル差や、日本とアメリカの設計士やインテリアデザイナーの仕事環境や社会的ポジションの違いに、愕然とさせられました。こういった経験を通じて、一流のスタッフを集めた、最高の家づくりをサポートする事業を始めました。シアトルでラグジュアリーな邸宅を楽しむ海外ツアー企画、輸入インテリアセミナー等、熱心なお客様向けに数々のイベントを実施しました。希望の輸入インテリアで設計や工事が上手くいかずに困っていると、全国のお客様から予想以上に多くのご相談があり、高級輸入住宅の新築とデザインリフォームを全国展開していきました。
ティアラジャパン設立
2007年、ようやく独立開業する時が来ました。当初は、私自身の最も専門分野である商品キッチン販売を考えていましたが、「窓もモールディングも含めて家全部のインテリアコーディネートやプロデュースをした方が良いよ!」と顧客の皆様や周囲からアドバイスを頂き、後押しされました。お客様のリフォームに役立つ事業を起こすことを決意し、2008年に株式会社ティアラジャパンを設立、デザインリフォームBeauty Interior事業を発足するに至りました。
初めに書いたとおり、私は成り行きでキッチンデザイナーになりました。不器用ですが、やる気だけはある私は、割と早い段階から、先輩方や経営者に手塩にかけて育ててもらった気がします。なかなかありそうでないことで、とても感謝しています。素晴らしい人に出会って、素晴らしいメンバーと一緒に、最高のクライアントの仕事をする。いい仕事をするために、必要な事を教えてくれる人や、そのチャンスを与えてくれる人に恵まれていました。欧米オーダーキッチンの設計、家一棟分のインテリアコーディネート、輸入住宅プロデュースへと、形を変えながら続けてきたインテリアデザイナーという仕事でスキルアップを経て、私は仕事の面白さと、インテリアデザイナーの仕事の魅力を学んできました。自分自身のプロフェッショナルな分野と経験を活かしてできることを、少しでも貢献していければと思っています。